コラム
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第1回
2020年12月10日に、チームの公式サイト(のニュース)でも正式に発表がありましたが、この度、NTTドコモレッドハリケーンズにチームアドバイザーとして参画することになりました福富です。
私自身、これまではサッカーの仕事をしてきたため、ラグビーに携わることは初めてですが、これまでの経験を活かし、1日も早く、1つでも多くチーム貢献していけるよう尽力していきます。どうぞ宜しくお願いいたします。
チームにおける私の役割を簡潔にいうと、チームワーク強化、さらなる組織力の最大化、いわゆるチームビルディングという点でサポートしていくことです。
そこで、今後、チーム公式サイト内で “私が感じたこと”、 ”何を課題だと判断し”、 ”どのような狙いをもって改善策を処方したのか” ということを、わかりやすくご紹介していきたいと考えてます。
チームワークを実現していくためには、選手自身がそれらの知識を身につけていることが重要です。そこで、理論や知識のインプットを目的とした「ミーティング」と、実際に体を動かしながらチームワークを表現する実践形式の「トレーニング」の2パターンを使い分けながら、私はチームに関わっていく予定です。
今回はチームに最初に行なったミーティング時の話を中心にお伝えしていきます。
福富信也が考えるレッドハリケーンズ
(当記事を寄稿しているのが12月末で)すでに私はチームに帯同し、レッドハリケーンズのチームワーク構築・強化を目的に、指導をスタートしています。
私にとっての指導初日は、ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチが来日し、本格的に現場の指揮を執り始めてまもなくしてからでした。
ヨハンの来日前から、下沖正博GMには “ヨハンのコンセプト” を丁寧に説明いただき、ミーティング資料を用意しました。
実際にミーティングを行なう前には、ヨハンと打ち合わせを実施し、(ミーティング時に使う)スライドを投影して、プレゼン形式でその内容をチェックしてもらいました。
その内容を見たヨハンからは「素晴らしい!」と感想をもらい、改めて「このヘッドコーチは経験則でチームビルディングの重要性を強く認識しているな」と実感しました。そして、その晩、翌日のミーティング本番に向けて、OKをもらった資料に私は再度修正を加えました。
最後に修正を加えた理由は、「(説明する)意味が同じならヨハンが好んで使っていた言葉の方がいい」と思ったからです。その方がヨハンとの信頼関係も構築できますし、ヨハンのマインドが選手に浸透しやすいはずだと考えたからです。
ちなみに、今回のミーティングは、現場に係る全員(選手・コーチングスタッフ・通訳・トレーナーなど)を対象に1時間程度実施しました。いくつかあったポイントの中から、当記事内では「企業チームの責任」についてご紹介します。ミーティングでは、「チームが目指す姿」「チームの存在意義・使命」「企業のシンボリックスポーツとしてのあり方」「そのためのマインド」という点を中心に話をしました。
Team Philosophy
私たちはラグビーを通じて夢と感動を創り、社会に貢献できる人間となる
Team Slogan
PLAY TO INSPIRE
ご覧いただき、お気づきの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これは今シーズン、チームが掲げる「チーム理念(Team Philosophy)」と「スローガン(Team Slogan)」になります。私は、この2つこそが最重要だと考えています。
ミーティングでは、参加していた全員に、この「抽象的な」チーム理念とスローガンを「どのように捉えているのか」「どう理解しているのか」を問い、丁寧に紐解きながら「具体的な」行動に変換していきました。その理由は、抽象的な言葉だと、具体的な行動に結びつきにくいからです。
そして、ヨハンがたびたび口にしている「なぜラグビーをしているのか(ラグビーに携わっているのか)」「なぜ今グラウンドにいるのか」というのを今一度考え直すことが重要だと伝えました。
1%でも勝つ確率を高める努力を惜しまない集団に

レッドハリケーンズは、NTTドコモのシンボリックスポーツチームです。ちなみに、シンボリックスポーツとは、企業に務める社員の一体感(帰属意識)の高揚と会社のイメージアップ、地域貢献等を果たすことが求められ、レッドハリケーンズはラグビーを通じてその役割を果たすことになります。
そこで、すべてのチーム関係者の目指すべき方向性を合わせるためにも、重要となるのが「チーム理念」や「スローガン」です。
それに沿って考えると、レッドハリケーンズは、選手・チームスタッフ全員が今こそ手を取りあって、チーム理念である「ラグビーを通じて夢と感動を創り、社会に貢献できる人間」を目指すことが必要なのです。
休日にスタジアムへ足を運んでくださる方は、単に試合を観に来ているだけではありません。「素敵な体験」を期待して、貴重な「お金」「時間」を投資してくれています。試合後、サラリーマンが「感動した!よし!明日からも仕事頑張れそうだぞ!」とか、家族での夕食がレッドハリケーンズの話題でもちきりになったり、そういう「素敵な体験」を期待しているのです。
実際に私がチームに関わり始めて1ヵ月弱、チームスタッフとコミュニケーションを取り始めてから6ヵ月弱。短い期間かもしれないですが、私はそのあたりが「チームに共通認識として伝播できていないのでは」と感じました。それが影響し、チームとして意識が統一されず、結果的に昇降格を繰り返す状況を招いているのではと考えました。
そういう視点で捉えると、「この練習風景を見た人たちが、果たして夢や感動を持ち帰ってくれるだろうか?」「自分の生活スタイルは、スタジアムへ来てくれる人たちに”素敵な体験”を約束できるような姿だろうか?」と問い続けながら、日々過ごしていってほしいわけです。
ロッカールームの整理整頓や、練習時の素早い集合、円陣の際の選手同士の距離感、妥協のないコミュニケーション、最後まで走り切る精神力、疲労回復のための食事や睡眠など、という点もそれに該当します。
今回の私の狙いは、チームの基準を1段階上げて、ラグビー選手として24時間を高い意識で過ごすマインドセットの浸透でした。抽象的だった理念やスローガンを具体的な場面・行動に落とし込んだことで、今後変化が見られるかもしれません。根本的なところからチームを見直す考えに、ヨハンも同意してくれました。
今シーズンのレッドハリケーンズは最後まで諦めない!

今シーズンのレッドハリケーンズは、「勝ちにこだわるアグレッシブなラグビー」をしていきます。これは、ヨハンの考えるラグビーでもあり、フォワード、バックスが一体となってピッチ狭しと縦横無尽に走り、チャンスと見れば自陣からでも積極果敢にアタックをしかける……それが、今シーズンのレッドハリケーンズのラグビーです。
「どんなに強いチームであっても、この世に”勝利”を約束されたチームは1つもない。勝利は約束できなくても、勝利の確率を1%でも高める努力だけは惜しまないこと、これだけは約束してほしい」
これは、私がミーティングで選手たちに投げかけた言葉です。
試合に向けた入念な準備、最後まで闘い続ける姿勢、1%の可能性がある限り努力を惜しまない、for The Teamの精神でチャレンジし続けるレッドハリケーンズの今シーズンに期待してください。
それを実現可能とするため、クラブは以下の10項目を掲げています。これだけは必ず守ってもらうというものです。
- 自ら判断し、行動する
- 規律を守る
- 何事にも手を抜かずハードワークする
- あらゆる準備を怠らない
- オンオフを切り替える
- 味方を敬い、助け合う
- 当たり前をあたりまえにする
- チャレンジし続ける
- 自己管理を徹底する
- チームファーストで考える
この10個の約束、正直すべて基本的なもので、特段ラグビーだからというものではありません。ただ、こうした「当たり前をあたりまえにできる集団」こそが、チームとして機能し、最後まで戦える集団となっていきます。
たとえ、戦力的に、実績的に、遥かに上をいっているチームを相手にしても、爪痕を残すような気持ちの入った試合を展開できるはずです。一生懸命やることで勝利が遠ざかることはありえません。
進化するレッドハリケーンズ、応援お願いします!

今シーズン、レッドハリケーンズは、過去最高のリーグ戦成績11位を越え、リーグ戦8位以内という目標を掲げています。
長引く新型コロナウイルス感染症の影響。仕事だけではなく、普段の生活までも明るいニュースが少ない状況です。そうした下を向きがちな昨今ですが、その状況を吹き飛ばすほどの、熱く、アグレッシブなラグビーを通じて、皆さんに感動を届けられるよう、今シーズン、レッドハリケーンズは闘います。
お金を払ってきてくださるお客様、普段から各地域で精力的な応援をしてくださる方は、単に “ラグビーを観る” だけではなく、素敵な体験を求めて来てくださるはずなので「観に来てよかった。明日から俺も仕事頑張れる!勇気もらった!」と感じてもらえるように闘います。
Profile(プロフィール)
福富信也(ふくとみ・しんや)
Jリーグ「横浜F・マリノス」のコーチを経て、2011年東京電機大学理工学部に教員として着任(サッカー部監督兼務)。また、その傍ら、チームのメンバーが互いに違いを認め、尊重しあい、永続的に学びと発展のあるチームづくりを支援する株式会社Humanergy(ヒューマナジー)を2015年に設立。
【実績 等】
日本サッカー協会公認指導者S級ライセンス(Jリーグ監督必須ライセンス)で講師を務め、Jリーグトップチームや年代別日本代表を指導。2016-17シーズンに「北海道コンサドーレ札幌(J2優勝|J1昇格・定着)」、2018-19シーズンに「ヴィッセル神戸(天皇杯優勝:ACL 出場権獲得 / ゼロックススーパーカップ優勝 等)」。その他、企業を対象にした研修実績も豊富。雑誌連載、新聞取材、テレビ・ラジオ出演など多数。著書に「脱トップダウン思考」他2冊。
参考)
2020年度チームアドバイザー就任のお知らせ https://docomo-rugby.jp/news/detail.html?id=4202
株式会社Humanergy: https://huma-nergy.com/